看護師の転職で7対1看護体制を選ぶ
7対1看護体制は、2004年の診療報酬改定により新設された看護体制です。
7対1看護体制では1人で7人を看る看護体制で10対1より手厚い看護体制だとして始まりました。
10人より7人、7対1看護体制では仕事が楽そうですが、転職先として有利なのでしょうか?
7対1看護体制とは
「7対1看護体制」は、2006年(平成18年度)の診療報酬改定により新設された看護体制です。
「7対1看護体制」とは、
入院患者7人に対して看護師1人以上を配置する
というもので、
従来の「10対1看護配置」に比べて、手厚い看護ができるとする体制で、
高度医療への対応や、医療安全の確保を図ることができることから、従来の看護体制よりもより安全で信頼できるという看護体制なのです。
2006年度の診療報酬改定の前には、10人、13人、15人の3区分でしたが、新に7人が加えられたのです。
7対1入院基本料では入院患者1人につき1日に1,566点が算定でき、14日の入院期間中は毎日450点が、15日以降30日以内では毎日192点が加算されますが、入院期間が90日を超過した場合には939点になります。
ちなみに、平成28年度の診療報酬点数は下記の通りです。
平成28年度 診療報酬点数
7対1入院基本料 (7対1看護体制) 1,591点
10対1入院基本料 (10対1看護体制) 1,332点
13対1入院基本料 (13対1看護体制) 1,121点
15対1入院基本料 (15対1看護体制) 960点
このように、
入院期間で15日、31日、91日において収益のダウンがありますが、14日以内の入院であれば1日当たり2万円以上の入院基本料が入ることになるのですが、90日を超えれば1万円以下にダウンします。
7対1入院基本料の施設基準
7対1看護体制による7対1入院基本料の施設基準として、
- 看護職員数は常に入院患者7人に1人以上
- 看護職員の最小必要数の70%以上が看護師
- 入院患者の平均在院日数が18日以内
- 看護必要度基準を満たす患者を15%以上入院させる病棟
- 常勤医師数は入院患者数の10%以上
- 病棟当たりの病床数は原則として60床以下
などの規制があります。
7対1看護体制で看護師不足する
2006年の7対1入院基本料の導入時には、
7対1看護体制の普及は全国で2万床くらいだろうとの見積もりでしたが、
医療施設の収益性の高さと、看護師の看護労働の軽減効果などから、
予想を大きく上回り、35万床を超えるまでに増加しました。
この新基準により、従来の10人の区分に比べ7対1看護体制では、
100床当たりの病棟では年間約1億円の診療報酬が増加する
ことから、
大病院では病床を増やして7対1看護体制を始めたりしたこともあり、医療機関で看護師の取り合いが盛んになったり、中小病院や地方の山間部の病院には患者が集まらないという傾向が進んだのです。
7対1看護体制で看護師不足に
7対1看護体制に要する看護師の数を計算してみましょう。
60床の病棟で、病床利用率を80%と仮定すれば、入院患者数は48名です。
7対1入院基本料では、入院患者7人に常時1人の看護職員数が必要ですが、24時間勤務ではありませんから、7人いれば基準を満たすかに思えますが、職員は24時間勤務ではありませんので、常時7人の看護職員を維持するためには少なくても3倍程度の看護職員が必要で、
48 ÷ 7 x 3 = 20人
との計算になりますが、さらに、休日、有給休暇、出産休業、育児休業、家族介護休業等などの休暇や研修や教育などを配慮すれば、
35人程度の看護職員がいなければ、「常時7人」の施設基準を満たせない訳です。
さらに、7対1看護体制病棟では10対1入院看護体制病棟に比べて看護労働が軽減されると言うこともあり、
多くの看護師が7対1看護体制病棟に囲い込まれ、
- 大都市と地方での看護師の不均衡
- 大病院と中小病院での看護師の不均衡
- 全国的な看護師の不足
に繋がっているのです。
7対1看護体制病棟の減少化とは
このような、7対1看護体制病棟の急増や看護師の不均衡などを受け、
2014年の診療報酬改定では、7対1入院基本料について、特定除外制度の廃止、看護必要度の見直し、など、大きなメスが入れられ、施設基準の厳格化が盛り込まれました。
2014年の見直しでは、
- 長期入院に対する特定除外制度の廃止
- 重症度・看護必要度を「重症度、医療、看護必要度」に変更
- 自宅等への退院患者割合75%以上
- 短期滞在手術対象拡大と平均在院日数の計算対象からの除外
- データ提出加算
などの項目が改定され、急性期医療を行なわず、軽症患者を多く抱えているような医療機関では7対1入院基本料を取るのが難しくなったのです。
この結果、7対1看護体制病床は2014年の改定後に減少し始め、また、10対1への移行を促す措置として病棟棟群単位の届出制度が導入され、大病院には病棟数の制限も付けられました。
マスコミの報道によれば、
- 2014年の改定で2年間で7対1看護体制病床を9万床を削減
- 2025年までに18万床減らす
ことを目指していると報じています。
「急性期医療を担う」という政策目的で導入された7対1入院基本料でしたが、看護師の数を揃え、平均在院日数が短ければ、1日あたり1,555点という高い報酬点数が得られるということから、本来の政策目的にそぐわない形で7対1看護体制を届け出る病院が続出してしまったのです。
2014年の改定要件をクリアできない医療機関は、新設された亜急性期患者を受け入れる「地域包括ケア病棟」や、報酬が低い10対1看護体制病床に戻らなければならないのです。
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7対1看護体制は看護師に有利か
7対1看護体制は看護師にとって有利なのでしょうか?
看護師の転職サイトでは、
7対1看護体制ですから仕事が楽です!
と、7対1看護体制をとる医療機関への転職を薦めところも少なくありません。
数字から見ると、
- 1人で7人の患者を看なければならない
- 1人で10人の患者を看なければならない
では、単純に計算すると、看護の労働力が30%少なくて済むことになります。
看護師からみると、看護の受持ち患者が減るのですから、歓迎すべきシステムのはずですが、必ずしもそうではありません。
看護師不足や人件費の問題を抱えた医療施設では高額の入院基本料を得られることから、無理な体勢であることを認識しながら無理して「7対1看護体制」をとっているところも少なくないのです。
ギリギリの看護師数で「7対1看護体制」を実施すれば、余裕がなくなり、
急用や体調不良で急に勤務を休むことが非常に困難
な状態での看護師のシフト体制をとることになりますので、誰かが休養で休むと残りの看護師の負担が増すことで休みが取りにくい状態での体制になることを覚悟する必要があります。
転職先を探す場合には、
単純に、
7対1看護体制だから勤務が楽な病院かもしれないと判断するのは早計
だといわざるを得ません。
しかし、
充分な看護師数を確保した上で7対1看護体制をとっているところもある
のですから、
7対1看護体制の転職先を探すときには、
求人情報に詳しい転職サイトなどを充分に活用して,
事前の充分なリサーチを行ってください。
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